こんにちは!うたごえ伴奏ピアニスト・音楽療法士の ひろせめぐみ( @megmeg0001)です。
昭和30年代に流行した「うたごえ喫茶」。ピアノやアコーディオンの生の伴奏で、お客様がみんなで歌うお店のことです。
今もうたごえ喫茶は健在ですが、60年以上の長い歴史を歩んできたのもあり、現在、うたごえ喫茶に関わる中心の人は50代以上の方が多いです。
でも実は、今の20〜30代でもうたごえ喫茶について興味や関心を持っている人がいるんですよ!
私もその一人ですし、大学の卒業論文でうたごえ喫茶について取り上げた星野紗也加さんもそうです。
そしてなんと、今、アメリカのシカゴ大学で「うたごえ運動」と「うたごえ喫茶」を研究している方がいらっしゃいます!李俊熙(リ・ジュンヒ)さんという方です。
(左)李俊熙さん(右)ひろせめぐみ
李さんは普段はアメリカにいらっしゃいますが、一時的に日本にいらっしゃる機会があり、お話することができたので、インタビューさせていただきました♪
「うたごえ運動」と「うたごえ喫茶」の研究のこと、論文のこと、李さん自身のことなど、いろんなお話が聞けましたよー!
李さんにインタビュー
(この記事は、2018年7月3日のインタビューを元に書きました)
李俊熙さん
まずは、李さんを紹介しますね。
李俊熙さん
李俊熙さんのプロフィールはこちら。
1988年韓国ソウル生まれ。幼少期をソウルと東京で過ごす。
以降日韓米で育ち、現在シカゴ大学歴史学部・博士課程所属。
研究テーマはうたごえ運動およびうたごえ喫茶で、歌いながらの現地調査も行なっている。合唱ではもっぱらバスを担当。
歴史を研究されている方なんですね。
早速インタビューです!
どんな研究をしているの?
めぐ
こんにちは。ひろせさんとお会いするの1年ぶりくらいですかね?全然久しぶりって感じがしないです(笑)
李さん
めぐ
確かに、李さんずっとこのブログ読んでくださってたし、SNSとかでもやりとりしていましたからね。今日は改めてよろしくおねがいします!
李さん
めぐ
早速、研究のことについて聞いてみたいのですが、李さんはシカゴ大学でどのような研究をされているのでしょうか?
「うたごえ」と呼ばれる2つの大きな現象について、ですね。
李さん
めぐ
はい。その2つとは「うたごえ運動」と「うたごえ喫茶」についてです。
李さん
めぐ
その2つの歴史を研究している、と考えていいですか?
そうですね。僕がメインにしているのは、戦後まもない時期の「うたごえ」という言葉が生まれた頃です。でも歴史をさかのぼると、「うたごえ」に繋がるような音楽に対する考え方と取り組み方は、戦前まで話が広がるんですよ。
李さん
めぐ
そんなに長い歴史があるのですね!初めて知りました。私、過去は振り返らない主義で(笑)
李さん
めぐ
李さんの話は、私では持てなかった視点や新たな情報を聞けて、すごく新鮮で勉強になります。
研究を始めたきっかけ
めぐ
李さんが、この研究を始めようと思ったきっかけってあるのですか?
中学生の時に「ロシア民謡」と「ソビエト歌曲」にハマりまして。
李さん
めぐ
当時、日本に住んでいたのですが、CDを買うとブックレットに「うたごえ運動」と「うたごえ喫茶」の話があり、その時に初めて知りました。
李さん
めぐ
李さん
めぐ
本格的に「うたごえ」の研究を始めたのは、大学に入ってからだったのでしょうか?
大学院からですね。研究テーマを決める時、「日ソ文化交流」がほとんど研究されていないことがわかりまして、そこで思い出したのが「うたごえ運動」だったんですね。
李さん
めぐ
それに加えて、シカゴ大学の図書館で関鑑子さんについて書かれた本を読んで人間的に惹かれたのと、「うたごえ運動」について日本ではあまり研究されていないのがわかって「じゃあこれでいこう」ということで、研究テーマを決めました。
李さん
めぐ
おおー!李さんが研究していることがだんだんわかってきました。
関鑑子(せきあきこ)
日本のソプラノ歌手、合唱指導者
関 鑑子(1899年(明治32年)9月8日 - 1973年(昭和48年)5月2日)は日本の声楽家、音楽教育者、音楽評論家。第二次世界大戦後、日本共産党員として同党の文化政策に基づく実践活動を行い、国内外において、日本のうたごえ運動の創始者と見なされるようになった。
引用:関鑑子 - Wikipedia
李さんの音楽歴
めぐ
ここからは、李さんの音楽歴についてお聞きしてみたいです!
ピアノを7歳から14歳まで弾いていて、クラスの音楽の授業とかでもピアノ伴奏したりとかしてました。
李さん
めぐ
その後、中学2年生から高校2年生までは、吹奏楽部で打楽器を担当していました。ティンパニを叩くことが一番多かったです。
李さん
めぐ
実はクラシックにハマったのは、スターウォーズが大きくて(笑)あとは、ショスタコービッチも夢中になりました。
李さん
めぐ
そうなんですねー!中高生の時に、クラシックからロシアの音楽にハマったのは、実は私も全く同じ経験をしています!私も吹奏楽部で、担当はクラリネットでした。ロシアの音楽にハマる人は歌声喫茶にハマる説ありますよね(笑)
そうですねー!その後ですが、僕はアメリカに行ってからは合唱団に入ってバスを歌っています。
李さん
めぐ
論文完成の時期
めぐ
李さん、研究の話に戻りますが、いつからこの研究はされているのでしょう?
2014年から研究を始めて、本格的に研究し始めたのは2016年の秋ですね。
李さん
めぐ
そんなに前から!李さん、2016年〜2017年はいろんな方の所を訪ねてインタビューされていましたよね!私もその一人です。今日はいつもと逆です(笑)
李さん
めぐ
今までどれくらいの方にインタビューされたのですか?
えーっと、30名近くの方にインタビューさせていただきました。
李さん
めぐ
30名!すごい!その研究論文早く読んでみたいです。その論文はいつ完成するのですか?
2020年ですかね。2021年になるかも?しれないですけど。
李さん
めぐ
私は半年先も見ないで行き当たりばったりで進むタイプなので、その計画力がすごいです!出来上がった論文って、私達も読めるのでしょうか?
はい。アメリカの論文なので、まずは英語で書きますけれど、ゆくゆくは日本語で出版したいと思っていますね。
李さん
めぐ
そうですね、論文出来上がってまた数年後、という感じですね。
李さん
めぐ
この研究の将来性
めぐ
今の研究ですが、将来的に「こう活用したい」あるいは「こう活用してほしい」っていうのはありますか?
そうですね…まずは「日本史のひとつとして示したい」というのがありますね。あと、うたごえ喫茶に関する書籍が少ないんですよ。だから、きちんと歴史をまとめたものを形にできたらいいなと思っていて、それはひとつの研究のモチベーションになっています。
李さん
めぐ
そして「うたごえ運動」や「うたごえ喫茶」の研究って、何か答えがあるものではないんですよね。音楽や文化に対して、個人として、あるいは団体としてどうあるべきか。いろんな見方があったし、読者にとってもそうあって欲しいと思います。
李さん
めぐ
僕の研究は、先行研究に基づいているもの。この研究から、誰かが未来について考えるひとつの材料となればいいと思っています。
李さん
めぐ
そうですね。歴史から学ぶことって本当に多いです!そういう意味では、李さんの研究は私にとってすごく興味深いです。
李さん
めぐ
私は「
歌声喫茶コミュニティ研究会」という研究会をつくって、メンバーとやりとりしながら研究をしています(現在は研究会は閉鎖)。李さんとはまた違った視点・方法からの研究です。
李さん
めぐ
ありがとうございます。研究していることの一つに「生の伴奏でみんなで歌うことが持つ力とその可能性を追究する」というのがあります。李さんの研究をきっかけに歴史を紐解いていくと「みんなで歌う」ことが持つ可能性が浮かび上がってくるかもしれないと思っています。
そうかもしれませんね!「うたごえ」とついたものは、いろんなことにチャレンジしてきた歴史があります。「そこから見られるものって何だろう?」って考えてつなげていくといいと思います。
李さん
めぐ
「歌声喫茶コミュニティ研究会」は「これからどうしていくか」という未来志向の研究会なので、李さんの歴史の研究を取り入れていくと、すごくバランスが取れそうな気がしています。
李さん
めぐ
オススメの本
めぐ
李さん、この記事では「うたごえ運動」や「うたごえ喫茶」の中身に関しては深く触れることができなかったので、最後に「もっと知りたい!」という方のために、オススメの本があったら教えてください。
そうですね、まずは、うたごえ喫茶の歴史については、この本が読みやすいかと思います。
李さん
(2019年5月追記)2019年5月27日に「うたごえ喫茶ともしびの歴史〜歌い続けた65年間〜」という本が発売されました!
著者は株式会社ともしびの前社長、大野幸則です。
上・下巻あります。
この本の詳しい情報は、こちらのページをご覧ください!
【発売中!】書籍「うたごえ喫茶ともしび」の歴史(ともしび前社長大野幸則の遺作著書)に、寄稿しました!
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【発売中!】書籍「うたごえ喫茶ともしび」の歴史(ともしび前社長大野幸則の遺作著書)に、寄稿しました!
こんにちは!うたごえ喫茶ともしびでピアノ伴奏をしています ひろせめぐみ( @megmeg0001)です。 「『うたごえ喫茶ともしび』の歴史」という本が、2019年5月27日に発売されました! 上・下巻 ...
めぐ
ありがとうございます!うたごえ運動についてはいかかでしょう?
戦後の「歌う文化」や職場でのコーラスについてはこの本が読みやすいかもしれません。
李さん
また、うたごえ喫茶からは離れてしまいますが、「合唱文化」を知るにはこの本もおすすめです。
李さん
めぐ
わー!ありがとうございます。李さん、今日はお忙しい中、お話聞かせてくださってありがとうございました!
まとめ
今回のインタビュー、すごく濃かったです!李さんの論文が出来上がるのが、ますます楽しみになりました!
(左)李俊熙さん(右)ひろせめぐみ