こんにちは!歌声喫茶ともしびでピアノ伴奏をしています、ひろせめぐみ( @megmeg0001)です。
「つながり格差」そして「現代社会における歌声喫茶のあり方」についてプレゼンをする機会をいただきました。
プレゼンをしたのは、音楽文化集団ともしびの全団総会です。
私が主宰していた「歌声喫茶コミュニティ研究会」の報告に合わせて行いました。
このページでは、音楽文化集団ともしびの全団総会と、そこでプレゼンした内容を紹介します。
音楽文化集団ともしび
2019年6月23日に、音楽文化集団ともしびの全団総会が開催されました。
「音楽文化集団ともしび」というのは、1969年にできた団体です。2019年に50周年を迎えました。
「歌声喫茶を続けたい」従業員とお客様が集い、ともしびを担って一緒に活動していくためにつくられた団体です。
「音楽文化集団ともしび」ができた経緯は、こちらの記事にも詳しく書いています。
「めざすのは、ともに生きあう社会」ともしびの大野社長が語る歌声喫茶の歴史とこれから
こんにちは! ひろせめぐみ( @megmeg0001)です。 私は、新宿の歌声喫茶ともしびというところでピアノ伴奏をしています。 ピアノやアコーディオンの生の伴奏で、みんなで歌うお店です! 歌声喫茶と ...
会社員の方、主婦、学生などが、音楽文化集団ともしびの団員として、一緒に活動しています。
私は団員ではないのですが、「歌声喫茶コミュニティ研究会」にともしびにも協力いただいたので、総会でその報告をする機会をいただいたのでした。(2019/7/14追記:団員になりました!)
発表のテーマはこちら。
「歌声喫茶コミュニティ研究会の取り組み & 現代社会に求められる歌声喫茶のあり方」
スライドをつくって発表したので、そのスライドも合わせながらプレゼンの内容を紹介します。
また、この記事では5分の発表で話しきれなかったところも補足をしています。
歌声喫茶コミュニティ研究会
今回の発表のテーマは「歌声喫茶コミュニティ研究会の取り組み & 現代社会における歌声喫茶のあり方」です。
「歌声喫茶コミュニティ研究会」は、地域で歌声喫茶を実践したい人を対象にした、インターネット上の研究会です。
「オンラインサロン」といわれる形式で、Facebookのグループ機能を使いました。
2018年4月17日〜2019年5月31日まで活動していました。現在は閉鎖しています。
閉鎖した理由は「この方法ではうまくいかないとわかった」というのが主な理由です。詳しくはこちらに書いてあります。
[お知らせ]歌声喫茶コミュニティ研究会を5月末に閉鎖することにしました。
こんにちは!ひろせめぐみ( @megmeg0001)です。 今回は、書こう書こうと思ってなかなか書けなかったことです。 このブログ内でもご案内していました「歌声喫茶コミュニティ研究会」オンラインサロン ...
この研究会には2つの目的がありました。
- みんなで歌うことがもつ力を追究すること
- その力を人と社会に役立つ形にして実践すること
歌声喫茶コミュニティ研究会が大事にしていたことはこちら。
- 誰もが先生であり、生徒である
- お互いのやり方を尊重する
- 歌声喫茶に関する「知恵の集合体」をめざす
今まで48名の方と学び合い、北海道から九州まで、全国の方が参加されました。
研究会の様子です。
- 熱心なやりとりが毎日活発にあった
- どこよりも深く濃い内容が学び合えた
- メンバー同士励まし合いながら1歩踏み出した方も多い
- 「みんなで歌う場」が新たに地域や福祉の場に生まれた
正確な数はわからないのですが、私が認識しているだけでも「みんなで歌う場」が研究会から9ヶ所、生まれました。
メンバーが新たに挑戦をする姿って、お互いにすごく励まされます。
挑戦をした方には、成功・失敗に関わらず賞賛しあう雰囲気を大事にしていました。
この研究会は始めは私個人で始めたのですが、途中からともしびにも協力いただきました。
ともしびの稽古場を借りて勉強会を開催したり、Facebookで斉藤隆さん、清水正美さん、田口順子さんがアドバイザーとして協力くださいました。
またともしびには、研究会の宣伝の協力をいただいたり、月に1回は「オフ会」(オフラインの会)と称して、ともしびのお店に集まることもしていました。
↑これ、年末だったから飾りがすごいですね(笑)
オンラインも、オフ会も楽しかったです。本当にありがとうございます。
研究会では、以下の内容を学び合いました。
- 活動のスタートアップについて
- 集客チラシのつくり方
- 歌声喫茶のいい司会とは?
- 歌声喫茶のいい伴奏とは?
- 活動に必要な収益を得る方法
- 地域コミュニティについて
- 歌声喫茶のアコーディオンについて
これ以外にも、歌声喫茶が世の中に対してどのような価値や効果をもたらすのか、など本質的なことを深め合うやりとりも多かったです。
外部から講師を呼んで学ぶ機会もつくりました。
コミュニティ運営の支援や研究をしているNPO法人CRファクトリーの呉哲煥さんに、期間限定講師として来ていただきました。
呉哲煥さんはじめ、メンバーいろんな方の視点が集まることで、私自身ハッと気付かされることも多かったです。
そして、運営面から研究会を通してわかったことは以下です。
- 様々な地域の方が「みんなで歌う場」の必要性を心から感じている
- 「学びたい」という強いニーズを持っている
- このように学ぶ機会が中々ない
本当に今、歌声喫茶について学ぶ機会も、体系化された知見も、励まし合う機会も中々ないんですよね。
私自身が「ニーズあるのかな?」と半信半疑で始めた研究会ですが、このように強いニーズがあったことは発見でしたし、とても嬉しく思いました。
現代社会に求められる歌声喫茶のあり方
プレゼンは、ここから「現代社会に求められる歌声喫茶のあり方」というテーマに移ります。
これらは、研究会で学び合いやりとりした中から見えてきたものです。
まずは、時代と共に「つながり」が希薄化してきたことを述べました。
昭和の時代には当たり前にあった、血縁・職場・地域のつながりが、平成の30年間で希薄になっていきました。
一人世帯は増え、終身雇用は崩壊し(2017年の会社の平均寿命は23.5年まで縮まりました)、地域の集まりは減少しています。
つながりやコミュニティが希薄化しているデータは、NPO法人CRファクトリーが出している「コミュニティ白書2016」に詳しくまとまっています。 コミュニティ白書2016
コミュニティ白書2016から得た私の考察も、過去に記事にしています。 「地域コミュニティとしての歌声喫茶」の可能性をデータで学んだことから考察する。
つながりが希薄化していくと同時に、現代は「個」を重視する時代と言われるようになりました。
それは、わずらわしさから解放される一方で、孤独と隣り合わせになるリスクも抱えています。
そして現代は、孤独が生み出している社会問題が多く浮かび上がっています。
- 健康状態の悪化(孤独は喫煙よりも身体に悪いというデータもあります)
- 幸福感の得づらさ
- 孤立した子育て、介護
- 虐待
- うつ
- 自殺
悲しいことに、今年は無差別殺人などの事件も起こっています。
孤独が生み出す社会問題、これらはどの世代でも起こりうること。実は私も、自分事として強く受け止めています。
このように表面化している問題は氷山の一角です。この下にはさらに多くの方がさみしさを抱えながら生きていることが伺えます。
さみしさを感じていても人には言いづらいことですし、だからこそ外からは見えづらい。そんな人がますます孤独に追いつめられていきます。
以前は「つながり」は、自動的に与えられてきました。
しかし「血縁」「職場」「地域」が希薄になった現代、つながりを持てるかどうかは個人のコミュニケーション能力次第になってしまいました。
これはどういうことかというと「つながり格差が生まれやすい時代」になっているということです。
このような時代にこそ、歌声喫茶は求められると感じています。
歌声喫茶は、言語でのコミュニケーションが困難であったり苦手であったりしても、自分にとって心地よい参加ができます。多様な人が、皆でひとつの楽しみの中にいられることができます。
これから増えるであろう「つながり格差」を埋めることができる可能性を感じるのです。
孤独によって起きた問題は専門家のケアが必要ですが、問題化しないよう、歌声喫茶が「予防」することもできるはず。
現代社会こそ「歌声喫茶」の果たす役割は、ますます大きくなると感じています。
つながり格差を埋め、誰もが生き心地よくいられる社会へ
「みんなで歌う場」を増やすための取り組みを、今後も何らかの形で行いたいと考えています。
補足
実際の発表はここまででした!プレゼンでは持ち時間が5分だったので、「発表できなかったけど、補足したいこと」をここからは書きます。
補足①自分自身も救われている
「孤独が生み出す社会問題」に触れました。これ実は、私が自分ごととして受け止めているから発信できたんです。
NPOではよく「自分が一番のお客さん」という話を聞きますが、私自身もまさにそうで。
私も、自分からアクションを起こさないと、気がつくと一人になってしまいます。孤独を感じる瞬間もあります。
歌声喫茶の活動をしているのは、自分自身がそこで救われている経験をしているからです。
補足②やりとりが生き心地につながる
私自身、大都会にいながらも孤独を感じます。
カフェや電車など人が集まるところに居ても、周りの人が風景にしか見えない。自分が透明人間になった感覚になることもあります。
それは、誰も私に関心を持つ人がいない、やりとりがないからだと気がつきました。
歌声喫茶では、人と人との中で、また音楽の中で様々なやりとりがありますよね。
- リクエストを出す
- 相席の人と会話をする
- 従業員が声をかける
- 新しい歌や人に出会う
- みんなと声を合わせて歌う
- 想いをわかちあう
歌声喫茶でのいろんな出来事が、自分がここにいるという「生き心地」がします。
歌を通して、人と人としてお互いに関心を寄せ合う場が、歌声喫茶なのかもしれません。
故・大野前社長が「歌い合うことは生き合うこと」と仰っていましたが、私もそれを深く感じています。
補足③発信の仕方で注意すること
今回のプレゼンは「孤独が生み出す社会問題」と、そこで歌声喫茶が果たす役割についてお話しました。でも、この話は扱いが難しいと感じています。
外に発信し過ぎると「歌声喫茶ってさみしい人が行く所でしょ?」となってしまう。
逆にさみしさを感じさせてしまうことになるからです。
だから「つながり格差の解消」は、歌声喫茶を実践する人の心構えとしてのみ持つ、あるいは行政などに提出する事業計画書には書いておくけれど、表には積極的に出さないほうがいいかな、とも思います。
外向けには、みんなで歌う「楽しさ」や「喜び」を全面に発信したい。
深く入っていった人に「実は歌声喫茶ってこういう効用もあるよね」みたいな「あとで種明かし」がいいと思っています。
(追記)この記事を読んだ、CRファクトリーの呉哲煥さんから以下のようなコメントをいただきました!許可をいただいたのでご紹介します。
外向きには楽しさ・喜びを出しつつ、スタッフや行政向け書類には意義や効果を伝えていく、というところの二段構えは非常にポイントですね。
自由と選択性が与件の時代において、楽しい・おもしろい・価値ある、が起点にならないと人の心はなかなか動かないですね。
楽しいだけでは社会(行政・制度)は動かない、意義深いだけでは人々は動かない。両方を持つこと。ここがすごくポイントだなぁと思いました。
まとめ
今回は、私が主宰していた「歌声喫茶コミュニティ研究会」の報告と、その発表内容を紹介しました。
今回発表した内容を、総会に参加した方だけではなく、広く発信したくて記事にしてみました。
何かしら考えるきっかけになればと思います。
音楽文化集団ともしびの全団総会の様子は、ともしびのブログでも紹介されていたので、こちらも合わせてご覧になってみてください!